
注目されてきた海老名駅 新築マンション市場は 新たな領域へ

ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。
LUFULL HOMESが毎年発表している物件への問い合わせ数を駅別に集計している「買って住みたい街ランキング」。最新版の当ランキングでは大規模&タワーマンションの供給が相次ぐ「勝どき」駅が昨年同様1位を維持する結果となった。ただその他トップ10内にて注目すべきは昨年37位で今年9位にまで順位を上げた「小岩」駅だ。一昔前であれば、「小岩」というと治安が不安視されるような声もあったが、なぜ現在はここまで人気が高まっているのだろうか。
「小岩」の人気が高まっている理由、それは大きく3点あると考えられる。
1つ目は治安の改善傾向である。かつて「小岩」というと治安が不安視されていたが、江戸川区や地域の商店街が駅周辺に防犯カメラを多数設置するなど積極的に防犯活動を行った結果、駅周辺の「小岩」が含まれるアドレスにおける犯罪発生件数は、2014年の1,345件から2024年には761件まで約40%減少しており、2022年から2024年の間に一時的な増加は見られたものの、全体としては減少傾向が続いている【図①】 。
「小岩」の人気の理由の二つ目だが、「小岩」駅周辺では、江戸川区最大級のフラワーロード商店街をはじめとする、昔ながらの趣を残した商店街の風情を大切にしながらも、地域の活性化や利便性の向上を目指し、都市基盤の整備や新たな施設の開発など、まちづくりに積極的に取り組んでいるという点である。
そして人気の理由の中でも特筆すべきポイントである再開発事業では、「100年栄えるまちづくり」を目指し、駅の南北両側で大規模再開発が進められている。
北口では地上30階、730戸のタワーマンションと商業施設や保育施設などからなる「JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発事業」【図②】 、南口でも同様に住宅・商業一体開発の市街地再開発事業が二つ進められており、これからの5年間で小岩駅周辺は大きく生まれ変わる予定だ【図③】。2024年は「小岩」駅の南北両方で複合再開発の目玉となるタワーマンション、計1,000戸近くが販売を開始し、前述の順位が大きく上昇したと考えられる。
では実際に人気の変化がどのように表れているのだろうか。新築マンション市況から紐解いていきたい。小岩駅最寄り2014年~2018年の供給戸数は410戸に対し、2019年~2024年の供給戸数は1412戸と大幅に数を増やしており、各年の平均坪単価を確認すると、10年前の@212万円に比べ、2024年は@450万円と2倍以上の価格にまで高騰している【図④】。
続いて現在販売中の各物件に焦点を当ててどのような変化が表れているのか見ていきたい【図⑤】。
まずは南口再開発の目玉である「プラウドタワー小岩フロント」だが、総戸数367戸、坪単価は@431万円で販売中である。2021年に販売開始をした「プラウドタワー小岩ファースト@333万円/233戸」に次ぐ同ブランドの物件だが、購入者のエリアを確認すると、ファーストの販売時よりも地元層からの集客が減少している。
ファーストでは、江戸川区からの購入者が39%(うち81%が小岩駅最寄)であったのに対し、昨年のフロントでは江戸川区からの購入者は19%にまで落ちており、ファーストでは目立っていなかった中央区や豊島区などからの購入も見受けられるなど、集客のエリアが地元から中広域、主に都心へと変化している。
また、タワーマンション以外を見てみると、2023年5月に販売していた「エクセレントシティ小岩ザミライズ@332万円/55戸」では江戸川区からの購入が56%であったが、同規模で現在販売中の「プレディア小岩@350万円/56戸」では江戸川区が26%と足元での集客は半分以下に減少している。価格や規模に差はあるが、「小岩」駅では上記のように足元よりも都内別の区からの反響がこの1年間で強くなっている。ではなぜ中広域層が小岩を検討し始めるのか。ここには当然ながらマンション価格の高騰が大きく影響している。都心はいわずもがなであり、他の東京約20分圏のエリアを比較すると下記などがあげられる。
これらのエリアを近しい相場、あるいはタワーマンションでなければそれ以下の価格帯であり、更には都内であることや既述したよう治安の改善や再開発が影響していると考えられる。
【図⑥】のエリアも同じくらいの価格になっており、そこを考慮すると「小岩」駅を選択肢として考えるのは妥当な流れでもあるのだ。まだ再開発が完了していない小岩は今後さらに大きな成長を遂げ、いつしか治安のイメージなど忘れ去られ、「100年栄えるまち」へと変貌を遂げるのかもしれない。そうなれば冒頭のランキングは来年、更に上昇しいつしか他のランキングなどでも上位に食い込んでくるのかもしれない。5年後の再開発の完成からその先へ長く注目していきたい。