2024年総括販売戸数は減少傾向どうなる2025年
注目されてきた海老名駅 新築マンション市場は 新たな領域へ
海老名駅周辺の再開発状況
海老名駅はJR相模線、小田急小田原線、相鉄本線の3路線が交わる交通の要衝であり、ここ10年で周辺地域では、商業施設・オフィス・高層マンションなどの多方面にわたる再開発を実現。2015年に開業した「ららぽーと海老名」を皮切りに、JR相模線と小田急小田原線の両駅間に広がる約3万5千平方メートルに及ぶ再開発地区に「VINA TERRACE」「VINA OFFICE」「VINA PERCH」が次々に開発され、新築マンションでは「リーフィアタワー海老名アクロスコート」「リーフィアタワー海老名ブリズコート」が建設し、県央エリアの中核を担う都市として成長を遂げてきた。これまで再開発事業で盛り上がりを見せる海老名駅周辺エリアだが、今後もその進化は止まらない。直近では、VINA GARDENSの最後の高層マンションである、「リーフィアタワー海老名クロノスコート」の予告販売が開始され、その同地区内では現在、温泉掘削工事が進行中。運営会社や施設名称などの詳細は発表されていないが、近隣住民やオフィスで働く人々の新たな憩いの場となる温浴施設が2025年度末に開業予定となっている。
また、本年3月に海老名市役所の周辺一帯の市街化調整区域だった約39.4ヘクタールの土地を市街化区域に編入したことで、海老名駅前のみならず、海老名駅東口方面の新たなエリアとして、商業施設・公共施設・住宅地の整備促進と都市機能の強化が期待されている。このエリアでは、三井不動産株式会社が新産業創造拠点として掲げる「三井不動産インダストリアルパーク海老名」の開発を発表。同施設は、物流用途に加え、オフィス・研究施設等のマルチユーススペースで構成され、新日本空調株式会社が、設備業界初の大規模テナント型研究施設として、新技術開発拠点「SNK EBINA Innovation X HIVE」を2027年度初頭に開設する予定となっている。
そして、住宅地の開発も旺盛だ。新たに市街化区域へ編入されたエリアの中で、厚木駅方面の街区では、本年6月に中新田丸田地区土地区画整理事業の造成工事が着手され、商業街区・公園街区・共同住宅街区・戸建街区の4つで構成された複合的な市街地の形成を目指している。さらに海老名市役所周辺エリアでは、5物件約730戸の新築マンションが計画中だ。
新築マンション市場
現在の新築マンション市場は、JR相模線のある海老名駅西口エリアに株式会社長谷工不動産が事業主である「ブランシエラ海老名」全228戸の1物件のみ販売されているが、2025年3月頃には同エリアに総合地所株式会社が事業主となる「ルネ海老名アーバンアリーナ」全99戸の販売が予定され、さらに2025年5月頃には前述した、小田急不動産株式会社が事業主となる「リーフィアタワー海老名クロノスコート」全304戸の販売が控えている。この3物件だけでも供給戸数は630戸を超え、過去10年間の供給推移の中で最大販売戸数となった2018年に迫っているが、新たに市街化区域に編入された海老名市役所の周辺エリアの新築マンション計画を合わせると、2025年~2026年にかけて1,400戸以上の販売供給が見込まれる。そんな過去最大供給戸数となる海老名駅周辺エリアだが、供給過剰の懸念や課題はあるのだろうか。
今後の可能性
筆者の結論から述べると、これまでの販売進捗通りとはならないが、供給過剰によって販売進捗が著しく不調になる可能性は低いと予測している。何故なら、2017年~2018年かけて、当時過去最大の販売供給戸数1,000戸以上の供給でありながら、同年に販売された物件の月平均契約数は6~8件となっている。その前後の年の月平均契約数を見ても10戸前後であることから、著しく落ち込んだ数値ではないと言える。また、直近の2021年~2024年にかけて完売した物件における月平均契約数は10.8~25.6戸であり、海老名駅周辺エリアの需要の高さを物語っている。
さらに、2020年に販売開始となった「セントガーデン海老名」や2022年に販売開始された「パークホームズ海老名ブルームプレミア」の購入者の前居住地を調査したところ、海老名市内が約20~30%であり、残り70~80%を中広域から獲得しているのだ。周辺市である、厚木市・座間市・大和市はもちろん、横浜市・相模原市・町田市・東京23区から各5~10%と、広範囲から満遍なく海老名市へ移住している。海老名駅周辺の再開発事業の賜物と言えるような結果であるが、2025年以降の同エリアの不動産価格は平均坪単価260~280万円くらいになると見込まれており、横浜市や東京23区と比較すると、不動産価格の面で魅力的であり、中広域から獲得できる要素となっている。
今後、販売が予定される物件は、これまでに供給がされていない、海老名市役所周辺に集中しており、海老名駅徒歩10分以上となる距離感など、未知数な要素が含まれているが、未だ衰えを見せない再開発事業のほか、駅前だけでなく街全体のインフラの整備が進む海老名市だからこそ、これからの市場拡大に期待したい。