注目されてきた海老名駅 新築マンション市場は 新たな領域へ
NEW「マンションバブル」は終焉?供給戸数は激減。「2024年問題」によるものなのかそれとも他の要因なのか。2025年の展望とともに読み解いていく。
2024年のマンション市場は?
2024年も終わりが近づく中、日本経済の停滞感が不動産市場、とりわけ新築分譲マンション市場にも少なからず影響を与えている様に思われる。物価や輸送費の高騰が続き、消費者の購買意欲が抑制される中で、首都圏でも販売の動きが鈍化し、2023年は平均して70.3%であった契約率も7月以外は70%を下回るなど市況は不調気味である。その他のデータを見ていくと2024年、首都圏の新築マンションは13,120戸が供給され、平均坪単価は379万円であった。2023年と比較すると坪単価は37万円程(9%減)、供給戸数は約半分、と数字が下落している。(2024年9月末時点)2023年のデータと比較すると2024年の新築分譲マンションは平均的に20%程度減少しており、10-12月の販売戸数を予測すると現在の数値13,120戸から8,000戸程度は上昇する見込みではあるが、いずれにしても昨年より5,000~7,000戸程度は供給が減少すると思われる。【図①】
特に、これまで小幅に増減を繰り返していた東京23区の供給戸数は2024年、大幅に減少した。23区では昨年までは少なくとも11,000戸程度と、過去10年で10,000戸を切ることは無かったが、2024年は11月中旬現在で4,887戸と、10,000戸に届くことは無さそうである。また、23区の平均坪単価を比較すると、昨年に比べ坪単価は50万円程下落している。【図②】
しかし、2023年の平均坪単価には大きなカラクリがあり、三井不動産・三菱地所が「三田ガーデンヒルズ」を総販売戸数952戸、最高価格45億円、平均坪単価1,356万円で販売し、23区の平均坪単価を80万円程引き上げていた。対する2024年は「ザ・パークハウス千代田六番町(三菱地所)」が総販売戸数16戸、最高価格4億9900万、平均坪単価1,246万円で都内最高額であったが、戸数が少ないため2024年の平均価格を大幅に引き上げるまでには至らなかった。つまり、2023年の平均坪単価は「三田ガーデンヒルズ」の販売を考慮しなかった場合512万円程度であり、542万円の2024年は昨年より30万円程上昇(6%増)しているのである。故に現状の23区マンション市場は供給戸数が大幅に減少し、価格は上昇しているのである。ちなみに話は少々それるが、2024年の23区で販売されていた中で平均坪単価の上位を確認していくと、高額ながらも月平均の販売の進捗は好調な物件が多く見られる。【図③】
東京以外の3県を見ていくと都内同様、価格は上昇したが昨年の供給戸数を下回っており、全体では20%程度減少する見込みである。なぜマンション価格は上昇し続け、供給戸数は減少してしまったのか。その主たる要因を探っていく。
原因は「2024年問題」?
今年、不動産業界に限らず大きな話題を呼んでいた「2024年問題」。この問題は、端的に説明をすると建築費と輸送費が高騰しますよ、と言った内容である。マンションデベロッパーはダイレクトにこの建築費高騰の影響を受け、価格を高騰させざるを得ないのである。【図④】
このように原価・建築費・輸送費など建設に必要な原価が年々大幅に高騰している為、デベロッパーはマンションの計画に慎重になっているのが現状である。また、インバウンド需要によってホテル業界に用地を取得されてしまうケースもあるという。実際、本年はゼネコンとの折り合いがつかず、マンション建設を延期や断念、用地を転売したというようなケースが見られた。さらに「2024年問題」による価格高騰の他には、日銀の金融政策により住宅ローン金利の上昇が予想されるため、今までは低金利であった変動金利による新築分譲マンションの購入が減少しているという問題もある。すでに金利の上昇は10月より始まっており、一部金融機関では4月に比べ最大0.15%上昇している。
どうなる?2025年
ここまでは「2024年問題」による価格の高騰や用地取得、また住宅ローンの金利上昇など不穏な話が多いが、この流れは来年どうなるのか。
2025年に1都3県で販売を予定している物件は全部で63件、約8,500戸ある。
(開発予定物件は158件/6252戸)。
●東京都:35件/5407戸(23区:26件/4267戸)
●神奈川県:13件/1374戸
●埼玉県:11件/1134戸
●千葉県:4件/553戸
中でも、品川のリビオタワー(総戸数815戸)や池袋のプラウドタワー(総戸数538戸)などが注目されており、来年もより高価格化の流れは強くなるとみられる。そうなると、一般的な層が買えないためパワーカップルや一部の富裕層、投資目的や海外からの購入などによって23区のマンション市場は支えられていくことになるだろう。では今後のマンション市場の中で事業主側はどのような商品づくりをしていく必要があるのだろうか。
高価格化が続く中でも、間取りやデザイン・立地で他物件との差別化を図ることで、高価格ながらも魅力が伝わるマンションはより販売が捗ると思われる。2024年に平均坪単価が最高価格だったザ・パークハウス千代田六番町はワイドスパンの間取りや「番町」という歴史あるエリアへの拘りなども高評価だったという。昨年の三田ガーデンヒルズにおいても逓信省跡地というだけあり、デザインも同庁舎の一部を保存再生するなど、格式のあるデザインを継承し話題を呼んでいた。資産として大きな意味を持つようになった現在の新築マンションはただ高価格化しているだけでなく、その土地や歴史などを重んじることによってより一層大きな価値を生み出していくことになるだろう。