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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2024-08-27 MAiL 不動産

売れ行き好調の 「小田原」駅。 流れは継続中!?

近年の小田原の市況は?

新築マンション市場において、好調が続いているエリアがある。それは観光エリアとしても人気のある小田原だ。
まず小田原市内の新築マンションにおける平均坪単価を確認すると10年前に比べ現在は70-80万円程差があり、現在の不動産市場同様に上昇している。(図1参照)
そんな中でも5年ごとの初月申込率においては、2014-2018年では約52.05%、2019-2024年では約61.75%と、大きく差がついており、高単価化している中でも人気が高まっていることがわかる。

直近の流れ

具体的に見ていくと、まず小田原のマンション市場における流れを変えるきっかけとなった2019年発売のプレミスト小田原栄町は高さ制限が緩和され上層階からの申し込みが多く、4カ月で完売。その3年後にあたる2022年には駅徒歩1分・住・商一体開発のレーベン小田原ザ・タワーが供給。@270万円と高単価ながら大きな話題を呼んで販売開始から2カ月という即完売といえるスピードで成約が付き小田原の市況が変化し本格的な好調市場の流れをつくった。また同時期に発売されたルサンク小田原栄町はレーベンからの回遊が多く、1カ月で完売。その後も2023年に発売したオープンレジデンシア小田原マーレは駅徒歩15分という比較的駅遠ながらも海に近い立地が評価されて半年で完売に至っており、好調物件が続く波は昨年まで継続されている。(表1参照)

好調の理由とは?

だが、当然理由もなしに売れるはずはない。地元の不動産関係者によると大きな理由は2つあると取れる。
1つ目の理由はコロナ禍による郊外の人気上昇である。
テレワークにより出社が減少し、都内勤務の会社員が郊外に新築マンションを購入するケースがコロナ禍では多く見られたが、新幹線駅である小田原もその需要に合致した。小田原駅は新幹線に加え、3本の路線で都内への直通運転をしており、週1出社で休暇を楽しみたい会社員にとっては好都合な立地である。
実際、釣りやキャンプが趣味の東京在住だった会社員の購入や、都内の新築マンションの価格高騰に際して本エリアに流れて購入するケースも増えているという。
2つ目の理由は2018年ほどまでは地元で新築マンションを購入したい富裕層に対し、条件があう新築マンションが供給されていなかったためである。

しかし2019年のプレミスト小田原の販売以降は条件志向に見合う物件が供給され、地元企業の社長やその家族、地元の医師など小田原市内で比較的高収入の層が購入しているケースが多く見られたという。
小田原市内の新築マンションは主にこの2つの理由が重なって、現在好調が維持されているのである。

今後はどうなるのか?

では前述した2つの理由を加味して今後もこの流れが続くのか1つずつ考えていく。
1つ目のテレワーク需要についてはどうか。
現在は出社回帰が進み、コロナ禍特需のような恩恵は受けにくいと捉えられる。だが、都心の新築マンションに手が届かないが層が、定期的に都内やその周辺からの流入は見られると思われる。実際、2023年に販売されたオープンレジデンシア小田原マーレや、2024年9月から販売開始予定のアルファステイツ小田原においても都内や横浜からの来場が多く見られている。

では、2つ目の地元富裕層の購入という点に関してはどうか。
前述した内容では、地元の高収入層による購入が多いと記したが、そもそも小田原エリアにおける年収1,000万円以上の借家世帯は市内全借家世帯のうち2.14%であり、これは神奈川県内でも決して高いランクにあるわけではない(参考:統計サマリ)。実際に地元の不動産関係者の話でも「地元のお金持ちもこぞって買うほどの数はいない」という。よって地元富裕層が近年新築マンション購入をしているケースは多いものの、この流れが今後も継続するとは限らない。すなわち、コロナ特需も無ければ富裕層の購入も続くとは限らず、現在の好調な流れが継続するかは分からない。

変化し続ける小田原

では小田原居住者はこのマンション市場に対してどのような評価なのか。関係者に話を聞いていくと、新築マンションが売れることは必ずしも地元エリアにとってプラスになるわけではないという。新築マンションの価格が大きく上昇することにより、周辺の中古マンションの相場も大きく上昇した。そもそも、小田原市内の平均年収から見るに、現在の新築マンションを購入できる層は少なく、多くは前述した2つの層によって購入されているのである。
富裕層を除く地元層から見ると、新築マンションができること自体あまり良く思っていない人も多いという。以前まで見えていた小田原城や富士山も見えなくなってしまう、自分たちが買えていたマンションが買えなくなる、など地元層にとっては開発によって失われたものも大きい。
今後、都内やその周辺からも一定数の流入者は確保できると思われるが、そんな中でも地元層もこの流れについて来られるかは疑問が残る。急速な発展や変化を起こすには地元とより密接につながる必要があり、地元との関係を無下にすることによって大きな失敗を招くこともあるのかもしれない。

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ビジネスマネジメント

久野 晶平

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