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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2023-06-23 MAiL 不動産

不動産の市場調査、こんな時どうする? 【訴求駅調査編】

新しい土地を仕入れる際、或いはプロジェクトをスタートさせる場合に、必ず行う市場調査。相場・競合・エリア人気・ターゲット母数など様々な変数を整理していくが、そんな中で度々どの駅を訴求すべきか、ということが論点になる場合がある。本記事ではそんな際の調査パターンを実際の案件を元に記していく。

訴求駅を迷うときってどんなとき?

A駅とB駅どちらをメインに考えていくべきか。これは不動産業界で度々議題にあがる内容だ。これが物件名に反映されることも当然あり、それによって顧客誘引性も変わってくるため市場調査の際に調べることは少なくない。ではそもそも不動産業界において、訴求する駅を迷うときとはどんなときだろうか。大きくは2つ考えられる。
1つ目は同程度の距離にある駅が複数存在するパターンだ(ex:A駅徒歩7分・B駅徒歩7分)。これは当然同じ距離に駅が複数あるためどの駅を最寄りのポジションとしていくか議論になりやすい。2つ目は最短距離の駅が1つに絞られる一方で、少々距離のある駅の駅力が高いパターンだ(ex:複数路線乗り入れるA駅徒歩15分・1路線のみ乗り入れるB駅徒歩7分)。この場合、中広域集客の必要性や価格と照らしわせた際の見せ方として多少距離があっても駅力の高い駅をメインで訴求する方が良いのではないか、ということで議論になりやすい。上記のような際はその判断材料となるように下記のような調査をしていく。

先行案件に学ぶ調査パターン

まず調査の中で鉄板のパターンは先行物件に学ぶということだ。先行物件がどのように訴求しているのか、物件名を付けているのか、そして売れ行きはどうかということを調査していく。
具体的に千代田区で販売した新築マンション案件の市場調査でも同様の調査をおこなった。その場所はJR「秋葉原」駅・JR「御茶ノ水」駅からともに徒歩8分の立地であった。秋葉原といえばオフィスエリアや商業エリアが混在し、複数路線利用可能な有名駅の1つだ。一方で「御茶ノ水」駅は大学病院や飲食店など利便施設が並ぶ一方で神田明神や湯島聖堂など歴史的な一面も併せ持つエリアだ。一見すると駅力の高い「秋葉原」が考えられるが、本物件は近隣でも過去マンションが供給された実績があり、それらを見ると周辺の住環境の良さから利便性イメージのある「秋葉原」ではなく「御茶ノ水」訴求・名義で売れ行きも好調な物件が多かったことから、同物件も「御茶ノ水」訴求に着地した。

居住者の導線を知る調査パターン

2つ目の方法として周辺住民がどの駅を利用しているか調査するパターンだ。これは国土交通省が5年に1度調査している大都市交通センサスを用いていく方法だ。国交省が首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏で独自にエリア分けをし、該当エリアの居住者がどの駅を初乗り駅として利用しているのかを把握することができる。具体的には「西日暮里」にて販売した新築マンション案件にて上記のような調査を実施した。同案件はJR「西日暮里」駅まで徒歩12分・京成線「新三河島」駅徒歩1分の立地であった。通常は駅徒歩1分の駅を訴求するのが当然だが、通勤の際に「新三河島」駅からは「日暮里」「西日暮里」駅で乗り換える層が多く、乗り換えの手間まで考えたら「西日暮里」駅まで歩いて行く層が多いのではないかと仮説を立て、調査すると「西日暮里」利用者が「新三河島」駅利用者の5倍以上多いというデータを調べることができ、「西日暮里」駅訴求に至った。

地道にこつこつ、アナログな調査パターン

既述した国土交通省の調査には欠点もある。それは国交省にて独自にエリア分けされているため、ピンポイントに物件周辺の居住者が利用する駅を調べることができないことだ。そんな場合、3つ目の調査方法として稀ではあるが、実際に現地の調査地点で、通勤時間帯に周辺住民がどの駅方面に向かうか目視で100~200人の行き先を記録し、集計するアナログな手法で調査することもある。具体的にはJR「亀有」駅へ徒歩16分orバス8分・東京メトロ「北綾瀬」駅へ徒歩13分の新築マンション案件にて調査を行った。東京23区の新築マンションにしては比較的駅距離のある物件のため物件周辺の居住者中心の集客になることが予想されたため、JR駅or東京メトロの始発駅どちらを利用する層が多いのかをピンポイントに調査する必要があった。そのような経緯で午前7:00~8:00にスーツやビジネスカジュアルの人の交通手段と行き先を記録したところ、全体の半数以上が「亀有」駅へ自転車やバス・徒歩で向かったことが記録されたため、「亀有」駅訴求に方向性が固まった。

反感を買うパターンには注意が必要

訴求する駅を定めると当然ながらそれが物件の名義にも反映され、物件ポジションを確立することにもつながってくる。しかし当然ながらその方向性を見誤ると反感を買うことにも繋がりかねないことには注意が必要だ。上記の例で言えば実際に購入を検討する層から「ここは西日暮里ではない・亀有ではない」といった反感を買い、販売する物件のイメージダウンになってしまう可能性もあったということだ。当然購入検討者はその物件名から普段利用する駅をイメージして検討するため、実際に現地に訪れた際に駅から離れている、或いは他に別の駅が最短距離にあれば元々のイメージと乖離が出てしまいかねない。そのため特に離れた駅を訴求したり、物件名にしたりする際はそれらのリスクを承知の上で判断していかなくてはいけない。

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この記事を書いた人

マーケッター

大山恭平

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