
人気急上昇!? 「小岩」駅の 未来とは!?
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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。
『空室税』新たな税金の名前が話題になっている。事の発端は2025年1月10日、神戸市役所内で行われた会見における久元市長による「空き部屋の発生の増加を抑制するための方策として法定外の税の創設を提言されており、私も共有いたします。」といった「空室税」に対する前向きな発言である。つまりどういうことなのか。まず、周知の事実ではあるが、現在のマンション価格は一部の富裕層や企業の投資目的・相続税対策などにより、一般層が手の届かない価格にまで高騰している。その結果、神戸市内の一部のタワーマンションでは高層階に空室が目立つ物件が存在するという。
実際に物件情報サイト、SUUMOで神戸市内のタワーマンションの調査をしてみると、2023年1月10日に竣工済みの「ベイシティタワーズ神戸 WEST 346戸 27階建 (住友不動産・関電不動産開発)」では現在販売中の中古住戸が少なくとも21戸あり、そのうち約76%に当たる16戸が20階以上の住戸となっている。中では未入居住戸も販売されるなど、まさに投資目的とみられる取引が見受けられた。さらに神戸市発表の資料で確認してみると、神戸市におけるタワマンの非住居率は16.6%、全国的には24.2%の水準である。中でも20階以上になると神戸市で約19%、全国的には約24%、40階以上になると神戸市で約33%、全国的には約37%にまで及ぶ。(図①参考)このような空室の所有者に対し、固定資産税などとは別の税金「空室税」を課税し、空室を減らしていくのが目的だ。マンションが売れているのに人が住まない、となるといずれマンションの管理問題だけではなく周辺施設などへも影響が出るのでは、という見解である。
話は少し逸れるが、人口減少などの問題を抱える神戸市は「持続可能なまち」を目指し、将来的な街の廃墟化リスクを減らすために2020年から条例で市中心部でのタワマン建設を規制している。この規制は、防災面のリスクや低層階と高層階での所得水準の差による住民の合意形成の難航、周辺にある小学校などの子育て施設が不足するのでは、という問題を払拭するのが目的であった。そして、今回の議題である「空室税」はこの「タワマン規制」から続く将来的な街を見据えた上でのさらなる方策となっているのである。
久元市長は現在、空室が目立っている東京オリンピック跡地の「晴海フラッグ」を引き合いに、警笛を鳴らしている。晴海フラッグ内の1つである「HARUMI FLAG SUN VILLAGE E棟」では150戸のうち62戸が法人名義の登録となっているなど、投資目的の販売が目立つという。
まず、空室税が導入された場合のメリットだが、住居本来の目的である実需が増え、人が生活することによって街全体や周辺施設の廃墟化を防げることが予想される。適正な管理が行き届くことにより短期的な人口増加ではなく持続可能な都市としての発展が目指せるのである。逆に、当然ながら現在の不動産価値の下落などがデメリットの予想としてあげられる。空室税が導入された場合、投資対象として高額で取引されてきた物件は所有しているだけで追加の税金を課されることとなり、価格を下げてでも販売しなければいけなくなるなど、投資企業や事業主からの反対意見は大いに考えられるだろう。
SNSなどを覗くと、賛否はあるが、高騰しすぎたマンションの価格抑制や住居本来の目的を考えるとこの施策は高評価である。導入された場合、短期的な目線では価格の下落が予想されるが、街全体の長期的な価値を守るためには良い考えでは、との声が多い。
前述の晴海フラッグをはじめとして首都圏でも空室問題への関心は高まっており、郊外に大量に建設されたタワマンにおいてはよりその問題が大きくなる可能性がある。実際、ここ20年でタワマンが急増した武蔵小杉ではタワマン住民と地元町内会の連携がとりにくくなり、地元町内会の1つが2025年3月に解散する予定だという。町内会は任意での入会にはなるが、まさに神戸市が懸念している地域防災などの問題が発生するのではとの声もある。このような問題を未然に防ぐために「空室税」の導入は効果的のように思える。法定外税の導入への壁は高いが、似た事例として宿泊税や熱海市の別荘等所有税などがあげられる。熱海市の別荘等所有税は街を衰退させないための一つの手段として良い例であり、別荘を所有している場合、定期的にその地域に来ないと法定外税が課税されるといった内容である。
「空室税」における具体的な金額や課税方法などは当然定まっていないが、もし神戸市で導入されたとなると大きな話題を呼び、現在の不動産市況へも少なからず影響してくるであろう。マンションの短期的な価格への拘りも大切だが、街としての価値を守り続けていくことも不動産事業として大きな役割と言えるのではないか。まずは神戸市の今後の動きを見守っていきたい。