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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2022-01-26 MAiL 特集記事

不動産業界へ 大きなハードルを抱える マイノリティ層

昨今、セクシャルマイノリティやLGBTsといった言葉をよく耳にするようになった。
不動産業界でも同様である。
しかし、賃貸や物件購入に至るまで、様々な問題が存在する。
周知の意味も込めて、実際に直面する問題を取り上げる。

不動産業界での認知

「誰も置き去りにしない」をモットーにするSDGsは、日常の様々なところで目にする。
そして持続可能な開発目標5つ目に「ジェンダー平等を実現しよう」という項目があり、
ここに深く関わるセクシャルマイノリティへの差別問題も同様、目に入る機会が増えてきた。
マンション市場においても例外ではなく、同性カップルの賃貸住居探しや住宅購入で様々な問題が存在する。
SUUMOが2018年に行った「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査」では全体の約80%がLGBTを詳しく知っている、もしくは聞いたことがあるという結果になった。
一方で同性カップルの入居を過去に断ったことがある不動産オーナーは全体で約5~8%であった。

以前、ネットニュースにある同性カップルが新居を決め、入居前の同意書内に「LGBTの方のご入居お断り」という記載があり、SNSに投稿したところ、不動産オーナーが大きくバッシングを受けたという記事があった。
しかし、実際の場合はオーナーに限らず一方的なイメージから担当者や管理会社が入居を不可としている場合も存在する。
このように賃貸入居のハードルが高すぎることもあり、やむを得ず物件購入に至る層も存在する。しかし、物件購入においても様々なハードルが存在する。

現実的な問題と心理的な問題

大きいハードルとなってくるのは現実的な面で2つ、加えて心理的な面があると考えられる。
現実的なハードルの一つ目は住宅ローンである。
日本では同性婚が認められておらず、ペアローンや収入合算を利用する場合にパートナーが銀行の定める「連帯保証人」に含まれないのが通常である。
2017年にみずほ銀行が住宅ローンの商品内容を変更したことから、複数の銀行が同性カップルに対応した住宅ローン制度を開始した。
一定の条件を満たせば婚姻夫婦と同様のローンを組めるようになったが、メガバンクや一部の地銀に限る。
また、共同でローンを組む場合に満たすべき条件として、パートナーシップ証明書あるいは合意契約に係る公正証書を必要とするケースが多く、異性同士のカップルであれば必要のない公的書類発行の手間や少なくない金銭的負担が発生する。

現実的なハードルの2つ目は、物件購入後の相続問題である。
遺書等の対策は存在するものの、法的な保証がないこともあり不安を抱くのは無理もない。
次に、心理的な大きなハードルとしては、LGBTs当事者ということ自体にある。
*調査から、不動産会社に相談をすること自体に抵抗がある人が全体の半数を占める。
中でも、日常生活でカミングアウトをしていない層にとってはさらなるストレスとなるだろう。
(参考:*追手門学院大学 地域創造学部地域創造学科)
では、住宅を選ぶ際に同性の住宅ローン等を熟知し、信頼のおける不動産屋はあるのだろうか。

LGBTsに親和性の高い不動産屋

■IRIS
IRISは「誰もが自分らしく」をモットーにする不動産仲介会社である。
代表の石野氏自身がセクシャルマイノリティであり、すべてのスタッフがLGBTs当事者あるいはアライ(理解のあるストレート)である。
LGBTsの不動産に特化していることもあり、同性向け住宅ローンの紹介や保証会社とも連携をしている。
また、LGBTs・不動産などをテーマにしたコラムも多数掲載されている。

■SUUMO for LGBTs
不動産ポータルサイトのSUUMOが提供する、LGBTs向けの住宅サポート部門である。
賃貸検討向けには「LGBTフレンドリー」物件を指定している。(LGBTであることを理由として、入居の相談や入居自体をお断りすることはない、と積極的に意思表示する物件)
マンション購入検討向けには「スーモカウンター新築マンション」を通してマンション購入をする顧客に対し「パートナーシップ登録証明書」の提示なしで住宅ローンの申し込みをすることが出来る。
さらに、新築マンションの購入にあたって個別相談を受け付けており、同性でのマンション購入における不安を払拭してくれる。

他にも、LIFULL HOME’sが不動産会社向けに「LGBTs接客チェックリスト」を提供。
同社は、不動産会社がLGBTsの方々の住まい探しのために、セクシャルマイノリティへの正しい理解を深め、適切なサポートをすることで偏見のない接客をできるよう支援を始めると公表した。

企業の努力とこれから

日本の人口のうち、約8.9%*がLGBTsとされている中で国内での浸透・理解は浅い。
しかし、2022年に東京都にパートナーシップ制度を導入することが決定されるなど、努力も見られる。
他にも、東急不動産、野村不動産、三菱地所、中央住宅、積水ハウス、大和ハウス等をはじめとする様々な不動産企業が基本的な認知・対策以上に積極的にセミナーを開催、役員内でのLGBTの認知、ディスカッションを行っている。
本紙を通じて、都内のみならず様々な企業の努力や、賃貸・購入に限らず様々なハードルを抱えるLGBTsの人たちへの理解や興味が少しでも広がってほしいと思う。
*(参考:電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2018」より)

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マーケッター

中島理絵

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