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マンション市場とSDGs
2015年9月の国連サミットにて、加盟国により全会一致採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。その中に「持続可能な開発目標:SDGs」が掲げられた。マンション業界でも、SDGsの影響は企業の取り組みにとどまらず、省エネルギー・創エネルギー機能を備えた物件やZEH-M(ゼッチ・マンション)も徐々に浸透し始めている。実際、環境省からZEH-Mに対しての補助金給付措置も存在する。
さらに2021年9月末、東急と伊藤忠都市開発は実質再生可能エネルギー100%の電力を利用した分譲タワーマンション「ドレッセタワー武蔵小杉」を発表。太陽光発電設備(5.5kw)を設置することで、共用部で使用されるすべての電気を供給、同時に蓄電池設備(5.6kw)を装備することにより停電時でも共用部への給電を想定している他、電気自動車対応の機械式駐車パレットを複数台導入。高圧一括受電方式で提供する、非化石証書を利用した実質再生可能エネルギー100%の分譲タワーマンションは日本初となる。
マンションと環境の共生
前述した物件以外にも昨今環境に大きく配慮した物件の供給はいくつも見られる。
2021年1月発売・全45戸の「グランドメゾンセンター北フロント」は、ZEH-Mの省エネルギーや二酸化炭素排出量削減だけではなく、断熱性を高めることによって部屋間の温度差を小さくし、家族が過ごしやすい住環境を実現。また、家庭用燃料電池「エネファーム」が設置されているのでエネルギー利用効率が高く、停電時に電気とお湯を使うことが出来る。他にも、太陽光発電やエコジョーズ、エアインシャワーなどの設備が備えられている点も環境配慮が見て取れる。
2020年11月発売・全528戸の「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」ではZEH-Mの他、日本初の太陽光発電と連動するエコキュート群制御システムを搭載。一般的にはマンションは戸数に対し屋上スペースが狭く、必要量の太陽光パネル設置が難しい。しかし本件では低層・15棟の多棟構成で太陽光パネルの設置スペースが確保できることにより日中に発電した電力をお湯に変えて、蓄熱を行うことが可能だ。
他にも「ザ・パークハウス」を通じたSDGsへの取り組みとして、地域に受け継がれる植生や日本の在来種を物件の植栽に採用することで、地域の環境を保全し生態系を守る取り組み(参考①)や、竣工時に違法伐採による木材使用を可能な限り回避するためにトレーサビリティ確保への努力(参考②)、入居後の暮らしに使うエネルギーの可視化などの環境への取り組み(参考③)を行っている。
売れ行きは?
上記マンションは環境配慮型でかなりスペックが高い設備仕様となっているが、実際の金額や売れ行きではどうだろうか。
「グランドメゾンセンター北フロント」は@334.8万円で価格帯が7,000万円~9,000万円。同駅最寄り物件で見ていくと@300万円前後、価格帯が5,000~8,000万円の中、頭一つ抜ける金額になっているが、本件は3ヵ月で完売に至った。(月15戸ペース)
次に、「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ(販売中)」は、バスアクセスのため、周辺物件より低単価。しかし、平均専有面積が100㎡(周辺物件は60~80㎡)のため、価格帯は5,000~10,000万円(周辺物件は4,000~7,000万円)で相場を上回る価格となった。駅遠というハンデがありながらも月24戸ペースで成約に至っており、売れ行きは好調である。
他にも、全520戸のZEH-Mである「ブリリアタワー 聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンス(販売中)」も周辺物件より割高であるが月33.6戸ペースで進捗。
ZEH-Mでかつ、低炭素建築物件認定を取得している全80戸の「ルネ上尾(販売中)」は月13.6戸ペースで成約している。
変化する社会意識の中で
これらのマンション購入に至った顧客の声としては、“環境に配慮しているから”といった声が少なくない。近年、異常気象や大幅な気温の変動などにより、環境への危機意識が高まっている中でマンション購入においても環境配慮する消費者が増えてきている。だからこそ、市場相場よりも割高物件、もしくは他条件が劣っていたとしても環境配慮型マンションは今の消費者にささる商品なのだろう。
そして、消費者のニーズもあってか最近はマンション業界での環境配慮のニュースが散見される。2021年9月末に住友不動産は、10月1日以降に設計を開始する物件について、省エネ性能「ZEH-M Oriented」を標準仕様化すること発表した。
また、オリックス銀行も今後3年間で、環境配慮型の投資用ワンルームマンションに100億円融資すると発表があった。今後、マンション業界でも環境保全の“傾向”ではなく環境保全が “標準化”する流れになっていくのではないだろうか。