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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2023-08-25 MAiL 不動産

住宅業界の概念を変える!? 話題の3Dプリンター住宅

そもそも3Dプリンター住宅って?

昨今、住宅業界のニュースで度々話題になりつつある3Dプリンター住宅。ではそもそも3Dプリンター住宅とはどのようなものなのだろうか。一般的な鉄筋コンクリート造の住宅の場合、型枠工事、そしてそこにコンクリートを流し込み住宅を建てていくのに対し、3Dプリンター住宅はデジタルデータに基づいて出力するのみ。ノズルの先からコンクリートを抽出してミルフィーユのように何層にも重ねて住宅を建てていく。設計図からそれを再現するように人の手で建てていくのが一般的であるのに対し、3Dプリンター住宅はそのデータを読み込んであとは自動で出来上がっていくのを待つだけというイメージであり、まさにアナログなものがデジタルに置き換わっている建築方法だ。日本国内だと、セレンディンクス社というベンチャー企業がこの3Dプリンター住宅に関するニュースをよく賑わせており、最近では国内初となる50㎡台のバス・トイレ・キッチンの水回りを完備した3Dプリンター住宅の竣工に成功している。さらに、それ以外にも大手ゼネコンの大林組や清水建設も3Dプリンター住宅事業に参入しており、今後更に大手企業が参入してくる可能性もある。

なぜ今、注目されているか?

ではなぜ現在この3Dプリンター住宅が注目されているのだろうか。当然、新しい技術として注目されているのはあるが、それだけではない。大きな要因としてあげられるのは不動産価格の高騰による影響だ。人材不足による建築費の高騰や資材の高騰・金融緩和により、特にマンション価格は年々増加し続けているのは周知の事実。そんな中でこの3Dプリンター住宅の最大の特徴は価格が圧倒的に安いことだ。例えば既述したセレンディクス社の50㎡台3Dプリンター住宅は限定販売されることが決まっているがその価格は約550万円。まさに車を購入するのと同じ値段で住宅を購入することが出来るのだ。当然これには土地の値段等は含まれていないため、実際に購入する際は更にコストはかかってしまうが、それでも低価格で手に入れることが出来る点は変わらない。

また価格面以外の大きなメリットで言えば工期時間があげられる。例えば上記のセレンディクス社の3Dプリンター住宅は44時間30分で竣工することに成功。通常は購入してから実際に引き渡しがされるまで1年以上空いてしまうこともあるが、3Dプリンター住宅は購入してから2日後には手に入る点は大きな特徴と言えるだろう。

現在のターゲットは?

そんな3Dプリンター住宅は、実際どんな層に人気があるのだろうか。当然まだ新技術として限定的な販売しかされていないものの、購入者や問い合わせの層における傾向は大きく3つに分かれる。1つ目は法人だ。3Dプリンター住宅の実用版を国内で初めて購入したのは医療・福祉関連会社であり自社の整骨院の敷地内に竣工。目的はトレーニング施設兼広告目的と住宅とは異なるものの、大きなニュースとなった。この国内初の3Dプリンター住宅のモデルのデザインが特徴的であり、車通りの多い通りに立地している同社の整骨院の良い広告塔になると考えての購入だったようだ。また同じく住宅とは別になるが、北海道の美術館内に宿泊施設として導入する企業も事例としてある。2つ目は、一般の富裕層だ。自宅の敷地内に建ててそこで自宅のペットを開放したいという要望が実際にあり、購入に至っている。そして3つ目がシニア層だ。

特に、今後3Dプリンター住宅の顧客のうち一般層として割合を示そうなのがこのシニア層だ。持ち家を購入しようとしてもローンが組めない・賃貸でも借りることができない層にとって3Dプリンター住宅は最適解と捉え、終の棲家として購入したいという問い合わせが多いようだ。

今後の展望と課題

では実際にこの3Dプリンター住宅が普及していけば住宅業界はどのように変わっていくのだろうか。まず、一番に考えられるのが現在割安で購入できる持ち家の購入者が減少するということだろう。中古戸建の中でも築古のものや、明らかに立地環境の悪い家を購入するのであれば、新築で立地を選びながら格安で建てられる3Dプリンター住宅を選ぶ層が一般的になるだろう。しかし当然普及までにはまだ課題もある。一番大きいところで言えば、建築基準法に則ることができるか否かという点だ。特に日本は地震が多くこの建築基準法も厳しいため、一般の住宅として普及させるためにはこれをクリアしなくてはいけない。実際にまだこれを公式としてクリア済みと発表している国内の企業はないため普及までにはまだまだ時間がかかるとされている。ただそれでも技術革新の際はこういった壁は必ず生じてきた中で徐々にクリアし普及していく。3Dプリンター住宅が住宅業界を変えるのか、普及できずに突発的なニュースとして終息するのか、今後も目が離せない。

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マーケッター

大山恭平

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