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ユニフィットの社員が、担当プロジェクトの広告実績を紹介したり、日々感じていることなどを書き綴っています。またマーケッターが市場の動向を切り裂くフリーペーパー『MAiL』や世の中の(生活者の)トレンドやニーズ、価値観を把握し、広告制作へ反映するために行っている定量調査の分析も公開しています。

2022-08-25 MAiL 不動産

集客はどこから? “今だからこそ”の 広告戦略

とある市内で販売された駅遠物件。
過去物件の販売状況からみても足元集客が
定石であったエリアにて、 リスティング広告が効果的となった。
顧客の層に変化が見られた理由とは。

様々な因子の中で

物件販売の為に広告戦略を立てていく際、エリア特性を踏まえた上でその物件自体の強みや弱みを分析し、強みの最大化や弱みのカバーを図って広告の方針を決めるケースが多い。広告方針に影響する因子としては他にも競合物件の存在や、民力とのバランス、中には世間の動向すら大きく影響してくることもある。例えば、競合が多く存在していれば数多い供給物件の中で他物件との差別化を図った上で広告戦略を立てる場合や、既に当たり前となったwith コロナという状況で顧客が新築マンションを選ぶ際の検討エリアが郊外と都心部に二極化するケース、昨今の世界情勢による資材価格の高騰も要因の一つである。しかし、様々な因子が影響して顧客の流れが変化し、仮説を立てて広告作りへ戦略構築していく中では、基盤として戦略の定石が存在することも事実である。では、様々な因子によって定石である集客エリアから顧客流入が変化した事例とその理由を紐解いていく。

八王子市駅遠物件

八王子市内にて、駅力の高いA駅から徒歩15分以上、最寄り駅となるB駅から徒歩10分以上という駅遠立地で販売されたこの物件は、過去の市場から見ると約20%程度高い単価で供給された。周辺相場よりやや高い単価ではあるものの、過去1年以内で単価が近しい物件の供給も散見されている。本物件周辺で供給された過去物件は8割程度が足元である周辺アドレスからの購入とされており、市場概況から鑑みても中広域よりも足元での集客、媒体としてもリスティング広告ではなくチラシメインで顧客が流入してくると予想された。

結果としてはリスティング広告開始から3か月間は来場・資料請求単価が4万円、その後は資料請求単価が4万円、来場単価が5万円と相場単価よりも大きく下回る価格で顧客を獲得することが出来た。これは中広域集客が効果的であるということが分かり、過去の集客状況とはやや異なるケースとなった。先述の通り、過去の販売状況としては駅遠エリアとなることから主に周辺アドレスからの来場・購入者が多く見られ、中広域での来場・購入者の割合は少ない。加えて、金額が安い物件であれば好調進捗、逆に相場価格よりも高い物件は進捗が鈍るといった価格志向のある市場であった。しかし、本物件では中広域からの流入が多く見られ周辺相場よりもやや高い価格であったものの、進捗も良い。では、一体なぜ流入属性や志向の変化が見られたのだろうか。

顧客の流れが表すもの

考えられる要因としては3つ挙げられる。

1つ目はコロナによる生活スタイルの変化によるものである。コロナ蔓延により、数多くの企業で在宅勤務が導入されたことで、住宅選びでのエリア制約が緩和され、検討エリアの幅が広がり、今回の中広域集客率の増加に至ったと考えられる。実際、本物件の位置する八王子市及び隣接する町田市は、転入数が東京都内でトップを争うほど多く、コロナによる郊外志向が顕著に見られるエリアである。

2つ目は、競合の存在である。リスティング広告が低単価で顧客を獲得できた理由として、同エリア内での新築マンションの供給が見られなかった。そのため、想定される検索ワードによる本物件のリスティング広告が該当ターゲットに対し効果的に表示され、例えば検索ワード「A駅 新築マンション」=「本物件」のようになっていたと考えられる。

3つ目は価格だ。本物件は、直近で販売された周辺物件に比べてやや高単価という位置付けであった。また、八王子市内からみてもやや高価格帯での供給となったが、他中広域から流入してくる顧客にとっては他エリアと比較すると相対的に購入しやすい価格にあった。

上記3点を併せるとコロナ蔓延によって、八王子市内への流入が増え、その中でも周辺エリアでは競合がおらず顧客が本物件に流入しやすい環境であった、加えて他エリアでの新築マンション相場を考えると周辺では高価格帯に入る本件も流入してきた顧客にとっては検討しやすい価格であったことから、結果としてリスティング広告によって低単価で顧客を獲得することが出来たのだ。

特にこれからの時代に

八王子市の事例では、過去の市場から見ると主に中広域集客となるリスティング広告での集客が難しいとされる駅遠物件でも、複合的に見れば中広域からの集客も見込める状況であった。また、当該エリア以外でも似た動き方をするエリアが存在しており、従来の集客戦略通りには進みずらい状況となっているのではないだろうか。このことから、重要なことは供給されるマンションの個性や過去の集客傾向だけではなく、供給された時期や競合物件、世間の動向も含めて複雑に要素が作用しあっている中でどのように顧客にアプローチしていくのか。特に変化の激しいこれからの時代であるからこそ、平面的ではなく様々な要素を踏まえて3次元的に戦略立てていく必要があるのではないだろうか。

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マーケッター

中島理絵

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